2026/08/06
日記

「法人をたたんで個人事業主にシフトしたいけれど、これまで積み立ててきた小規模企業共済や会社からの退職金はどうなるのだろう?」
このようなお悩みをお持ちの一人社長やオーナー経営者の方は少なくありません。
結論からお伝えすると、「法人で受け取る役員退職金」と「個人事業で最後に受け取る小規模企業共済」の2つにおいて、それぞれ退職所得控除を満額フル活用する賢いロードマップが存在します。
しかし、一歩間違えると税法上のペナルティを受け、控除額が数百万円単位で激減してしまうトラップも潜んでいます。
今回は、法人廃業から個人事業への移行時における「小規模企業共済の引き継ぎ(同一人通算)」と、税金対策で絶対に押さえておくべき「5年ルール」について分かりやすく解説します。
1.法人廃業時、小規模企業共済は「解約」以外にも「継続」という選択肢がある

法人の解散に伴い役員を退任する場合、本来であれば小規模企業共済を解約し、共済金を受け取ることが可能です。
しかし、廃業後すぐに個人事業主としてビジネスを継続する予定があるなら、「共済金を受給する」だけでなく、「契約をそのまま引き継ぐ(同一人通算)」という選択肢も含めて検討するのがおすすめです。
解約せずに引き継ぐ「同一人通算」のメリットとは?
小規模企業共済には、法人役員から個人事業主へ、同じ契約のまま積み立て期間を引き継げる制度「同一人通算」が用意されています。
法人役員時代の加入月数がそのまま個人事業主へ通算されるため、将来的に個人事業を廃止した際の共済金の受給率や退職所得控除の計算において、非常に有利になる可能性があります。
一方、法人の廃業時点でまとまった資金が必要な場合などは、一度解約して受給する方が適しているケースもあります。役員退任から1年以内であれば引き継ぎ手続きが可能なため、ご自身の資金計画に合わせて比較・検討することが大切です。
2.知っておくべき「5年ルール(退職所得控除の重複調整)」とは?

法人の役員退職金を受け取り、その後、個人事業を何年か営んでから小規模企業共済金を一括で受け取る際、最も注意しなければならないのが「5年ルール」です。
💡 かみ砕いて言うと…
退職金にかかる税金には、「同じ期間に対して、2回も税金の優遇枠(退職所得控除)を使ってはいけない」という二重取り防止のルール(所得税法施行令第69条3項1号)があります。 過去に退職金を受け取ってから5年未満(※条文上は前年以前4年内)で次の退職金を受け取ると、1回目と2回目で「期間が重なっている部分」の優遇枠が削られてしまう仕組みになっています。
⚠️ 【ワンポイント注意】企業型DCやiDeCo(確定拠出年金)がある場合-------------
今回は「役員退職金」と「小規模企業共済」の組み合わせで解説していますが、もし企業型DC(またはiDeCo)の一時金もあわせて受け取る場合は注意が必要です。
企業型DCなどを先に受け取り、その後に役員退職金や共済金を受け取る場合、法律上「前年以前9年内(※)」にDCの受取があると、重複期間の退職所得控除が削られてしまいます。
※実務上、この影響を避けて双方の控除を満額使うには「10年以上の間隔」が必要(いわゆる10年ルール)となります。
※受取順が逆の場合はさらに注意!
順番が逆で、「役員退職金・共済金を先に受け取り、後からDC一時金を受け取る」場合は、間隔を20年あける必要(いわゆる20年ルール)が出てきます。
受取の「順番」と「タイミング(年数)」によって税負担が大きく変わります。該当する方はあらかじめ受給スケジュールをしっかり確認しておきましょう。
---------------------------------------------
3.【シミュレーション】受け取る「年」を1年ずらすだけで控除額が600万円変わる!
具体例で考えてみましょう。
補足:退職所得控除の計算根拠
退職所得控除額は、原則として勤続年数(加入年数)20年までは「1年あたり40万円」で計算されます。
このとき、共済金をいつ口座に着金させるかによって、実際に使える控除額が大きく分かれます。

【NGパターン】2031年12月に共済金を受給する場合
2031年に受給する場合、2027年(法人退職)は「前年以前4年内(受取間隔が5年未満)」に該当。
⇒「5年ルール」が適用され、重複している15年分の控除枠(600万円)が引かれてしまいます。
結果、共済金側の控除額は 720万円 - 600万円 = 【120万円】に激減!
【推奨パターン】2032年1月以降に共済金を受給する場合
共済金の受取年(着金)を翌2032年にスライドさせると、2027年は「5年前の年」となり対象外に!
⇒「5年ルール」の適用を回避(リセット)できます。
結果、共済金側の控除額は 【720万円】 が満額適用!
個人事業の廃業届自体は2031年12月に出したとしても、中小機構への共済金の請求タイミングを調整し、実際の振込(受給年)を「2032年1月以降」へと年またぎさせるだけで、共済金側の控除額が120万円から720万円へと跳ね上がります。
受取時期をわずか1年スライドさせるだけで控除枠が600万円も増え、合計1,320万円の控除枠をフル活用できる計算になります。
4.「休眠」にして退職金を出すのは税務リスクが高い

「廃業ではなく、会社を休眠にして役員退職金を支給すれば手軽では?」とお考えになる方もいらっしゃいます。
しかし、一人社長の法人が「休眠」に伴って退職金を支給することは、税務署から「形だけ退職金にして税金を安くし、会社のお金を個人に移しただけ(実質的な退職ではない)」とみなされるリスクが非常に高いです。
万が一否認された場合、個人側では退職所得の優遇が消えて高い「給与所得」として課税され、法人側でも経費(損金)と認められずダブルで追徴課税を受ける恐れがあります。
安全かつ確実に小規模企業共済の承継と節税を行うのであれば、中途半端な休眠ではなく、「法人の解散・清算(廃業)」を選択することを強くお勧めします。
まとめ:出口戦略は専門家と事前のシミュレーションを!
法人の解散・清算、個人事業への移行、そして小規模企業共済の承継と受給。
一連の流れは非常に節税効果が高いスキームですが、「手続きの期限(1年以内)」や「受取年のカウント(5年ルールの適用)」など、日付や年数の管理を一つ間違えるだけで税負担が大きく増えてしまいます。
このようなご計画をお持ちの経営者様は、実行に移す前にぜひ一度、すずらん総合マネジメントまでお気軽にご相談ください。将来のハッピーリタイアに向けた最適な出口戦略をサポートいたします。
福田