中小企業が経営リスクに備えるための制度として広く活用されている「倒産防止共済」(正式名称:経営セーフティ共済)。この共済は取引先の倒産による資金繰りの悪化を防ぐための公的支援制度です。今回は、共済の基本情報やメリットに加え、令和6年10月1日以降の解約・再加入に関する税制改正についても解説します。
 
 
■倒産防止共済の基本情報                       
倒産防止共済は、中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する制度で、取引先の突然の倒産による資金繰りの悪化を防ぐことを目的としています。
主な特徴
- 掛金:月額5,000円~200,000円の範囲で自由に設定可能
- 積立上限:掛金総額が800万円に達するまで
- 税制優遇:掛金は全額損金(法人)または必要経費(個人)に算入可能
- 貸付条件:取引先の倒産時、無担保・無保証で共済金を借入可能
 
 
■令和6年10月1日以降の解約と再加入に関する新ルール
令和6年10月1日以降、倒産防止共済の解約と再加入に関して税制上の新しい制限が設けられました。これにより、再加入時の掛金の損金算入に一定の条件が課されます。
新ルールの詳細
- 対象:令和6年10月1日以降に倒産防止共済を解約した場合
- 制限内容:解約後に再度共済契約を締結(再加入)した場合、解約日から2年間に支出する掛金については以下のように扱われます。
- 法人の場合:損金算入が認められない
- 個人事業主の場合:必要経費として認められない
 
注意点
- 解約から2年間は掛金の税制優遇が受けられないため、再加入を計画する際は事業計画に十分注意する必要があります。
- 節税目的で頻繁に解約・再加入を繰り返すことを防ぐための規制と考えられます。
 
 
■共済金借入額の仕組みと上限
倒産防止共済では、取引先の倒産時に共済金(実質的には無利子貸付)を受け取ることができます。
借入条件
- 取引先の倒産が確定していること 倒産とは、破産手続き開始や再生手続きの申立てなど、法的手続きが進行している状態を指します。
- 売掛金や受取手形が回収不能であること 倒産により発生した未回収分に対してのみ貸付を受けることができます。
借入額の上限
- 掛金総額の10倍 または 未回収額 のいずれか少ない額が上限。
貸付の特徴
- 貸付期間:5~7年(借入額によって異なる)
- 金利:無利子
- 返済方法:均等分割返済
 
 
■解約時の返戻金の仕組み
解約時には、それまで積み立てた掛金に応じて返戻金が支払われますが、解約時期により返戻率が異なります。
返戻率のポイント
- 40ヶ月以上積み立てた場合
 掛金総額の100%が返戻金として戻ります。
- 12~39ヶ月の場合
 返戻率は掛金総額の80%~95%程度。
- 12ヶ月未満での解約
 原則として掛金は返還されません(死亡や法人解散などの特例を除く)。
 
 
■倒産防止共済のメリット
- 資金繰りの安定化
 取引先の倒産時に迅速に資金を調達でき、連鎖倒産を防ぐことが可能です。
取引先が倒産していなくても、一時貸付金として臨時に事業資金を借入れることもできます。
- 税制優遇
 掛金を損金または必要経費に算入でき、節税効果が得られます。
- 計画的な積立
 公的機関が運営する制度で安全性が高く、安心して活用できます。
- 柔軟な掛金設定
 月々の掛金を自由に変更でき、事業の状況に応じた資金計画が可能です。
 
 
■注意点と活用のコツ
- 解約と再加入に関する新ルールへの対応
 再加入を計画する場合は、解約後2年間の税制優遇が受けられない点を踏まえ、長期的な計画を立てることが必要です。
- 貸付の制限
 倒産した取引先との取引に基づく未回収金が対象であり、通常の資金調達には利用できません。
- 解約タイミングに注意
 40ヶ月未満の解約では返戻金が掛金総額を下回るため、長期的な視点での運用が重要です。
 
 
倒産防止共済は、取引先の倒産による資金リスクを軽減する有効な手段です。しかし、令和6年10月1日以降の解約・再加入に関する新ルールにより、短期間での解約や再加入は節税面で不利となる可能性があります。これらを十分に理解し、自社の経営計画に沿った形で利用することが重要です。
経営の安定化と資金繰りの強化を目指す中小企業にとって、倒産防止共済は引き続き強力な支援策となるでしょう。
 
倒産防止共済へのご質問等ございましたら、各担当者までお問い合わせ下さい。
 
【参考】
共済サポートnavi:https://kyosai-web.smrj.go.jp/index.html
経済産業省:002.pdf
 
 
福田