2026/09/29
日記
「従業員の給与を上げたいけれど、会社の負担も大きい……」
人手不足や物価上昇が続く中、従業員の賃上げを検討している企業も多いのではないでしょうか。
そんな経営者の方にぜひ知っておいていただきたいのが、**「賃上げ促進税制」**です。
一定の条件を満たして賃上げを行った企業は、増加した給与の一部を法人税額から控除することができます。
今回は、特に中小企業の経営者の方に知っておいていただきたいポイントを、できるだけ分かりやすく解説します。
①賃上げ促進税制とは?
賃上げ促進税制は、企業が従業員の給与等を前年度より増やした場合に、一定の要件を満たすことで、増加した給与等の一部を法人税額から控除できる制度です。
※対象となるのは原則として国内の従業員に対する給与等であり、役員報酬などは対象になりません。
「従業員の給与を増やした企業を、税制面から応援する制度」と考えると分かりやすいでしょう。
②中小企業なら基本の税額控除率は最大30%
中小企業向けの賃上げ促進税制では、一定の要件を満たす場合、給与等の増加額について次の税額控除を受けることができます。
給与等の支給額が前年度比1.5%以上増加
→ 増加額の15%を税額控除
給与等の支給額が前年度比2.5%以上増加
→ 増加額の30%を税額控除
※子育てとの両立支援や女性活躍の推進に積極的な企業として一定の認定を受けている場合には、税額控除率が5%上乗せされ、**最大35%**となる場合があります。
ここで注意したいのが、「30%」の意味です。
これは「法人税額の30%を控除できる」という意味ではありません。
あくまで、**前年度から増加した給与等の額の30%**を基に税額控除額を計算します。
さらに、実際に法人税額から控除できる金額には上限があり、原則として法人税額の20%が上限となります。
具体例で見てみましょう
例えば、前年度の雇用者給与等支給額が4,000万円だった会社が、今年度4,200万円を支給したとします。
給与等の増加額は、
4,200万円 − 4,000万円 = 200万円
です。
増加率は5%なので、2.5%以上増加という要件を満たします。
この場合、基本となる税額控除額は、
200万円 × 30% = 60万円
となります。
しかし、ここで法人税額が200万円だった場合、法人税額の20%が上限となるため、
200万円 × 20% = 40万円
となります。
したがって、このケースでは計算上の60万円ではなく、40万円が実際の税額控除の上限となります。
このように、賃上げ促進税制では、
「増加した給与等の額に対する控除率」
と
「法人税額に対する控除上限」
の2つを分けて考える必要があります。
③赤字の会社でも使える?
「うちは赤字だから、賃上げ促進税制は関係ないのでは?」
そう思われる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
税額控除は法人税額から差し引く制度であるため、その年度に法人税額がなければ、控除しきれない場合があります。
しかし、中小企業向けの賃上げ促進税制では、一定の要件を満たす場合、控除しきれなかった金額を5年間繰り越すことができます。
そのため、賃上げをした年度が赤字で法人税額が発生しない場合でも、将来黒字になった年度に繰越控除を受けられる可能性があります。
ただし、繰越控除を利用するためには、所定の明細書を継続して確定申告書に添付することや、実際に繰越控除を受ける年度にも一定の給与増加要件を満たす必要があります。
④令和8年度税制改正では何が変わった?
令和8年度税制改正では、賃上げ促進税制についても見直しが行われました。
中小企業向けについては、給与等の支給額が前年度比1.5%以上増加した場合15%、2.5%以上増加した場合30%という基本的な仕組みは維持されています。
一方、これまで設けられていた教育訓練費に関する税額控除率の上乗せ措置は廃止されました。
ただし、子育てとの両立支援や女性活躍の推進に積極的な企業について、一定の認定を受けている場合に税額控除率を5%上乗せする措置は引き続き維持されています。
この改正は、原則として令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
そのため、賃上げ率だけでなく、自社が上乗せ措置の対象となる取り組みを行っているかについても確認しておくとよいでしょう。
まとめ
人手不足が続く現在、従業員の待遇改善は、単なるコストではなく、人材への投資として考えることもできます。
給与水準を引き上げることで、従業員の定着率を高めたり、採用時の競争力を高めたりする効果も期待できます。
賃上げ促進税制は、そうした企業の取り組みを税制面からサポートする制度の一つです。
「今年は従業員の給与を上げよう」と考えているのであれば、賃上げ促進税制を利用できるかどうか、ぜひ一度確認してみましょう。
「自社は制度の対象になる?」
「どのくらい賃上げすると税制上有利になる?」
といった疑問がありましたら、ぜひご相談ください。
荒井