2025/07/03
日記
先日、法人決算をご依頼いただいているお客様に、上期の源泉所得税の納付書作成について打合せのためお電話しました。
その際、社長の奥様が電話に出られ、「今、法務局にいるので後ほど折り返します」とのことでした。
しばらくして奥様から折り返しのご連絡をいただき、新しい取引先に提出するために法務局で会社の謄本を取得されていたのかと思いお尋ねしたところ、個人の不動産の所有権移転登記の手続きをご自身でされていたとのことでした。
司法書士に依頼せずにご自身で登記手続きをされたことに非常に感心するとともに、一抹の不安も覚えました。
お話によると、登記の内容は、社長・奥様・お母様の三人が持分を持つご自宅の不動産について、お母様の持分を全て社長に贈与で移転する登記を済ませてきた、とのことでした。
税務署に相談したところ「2,000万円まで税金はかからない」と言われたので、今回その持分の贈与を実行したとおっしゃっていました。
その後、奥様に電話で詳しくお話を伺ううちに、社長のご意向とは少し異なる形になっているのではないかと感じました。
そこで、次の点を奥様にご説明しました。
① 贈与税の配偶者控除
2,000万円の控除は、贈与の日において婚姻期間が20年以上の配偶者からの居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を受けた場合に適用されます。
この控除を適用するには、税金が発生しない場合でも贈与税の申告が必要です。
② 暦年贈与の場合
年間110万円までであれば贈与税はかかりません。
また、親子間(直系親族)であれば特例贈与として税率が優遇される場合もあります。
③ 相続時精算課税制度を適用した場合
暦年贈与と選択のうえで、基礎控除110万円とは別に、贈与者ごとに累積2,500万円まで控除が可能です。
ただし、累積2,500万円を超えた分には贈与のたびに一律20%の税率が課税されます。
この制度は、60歳以上の直系尊属から18歳以上の推定相続人(直系卑属)への贈与に限られ、相続発生時に精算される仕組みです。
一度この制度を選択すると、その後は暦年贈与には戻れず、贈与のたびに申告が必要になります(基礎控除以下の場合は申告不要)。
今回のように、一般の方々はインターネットや役所での相談などで自分に有利な情報だけをもとに手続きを進めてしまい、結果的に誤った判断をされるケースが見られます。
相談先も、前提条件を正確に把握できずに誤った回答をしてしまうことがあります。
税務署や税理士に相談するのが最善ですが、適切な助言を行うためには、関連する情報をタイムリーかつ正確に提供していただく必要があります。
情報が小出しになると、せっかく節税を検討していても、結果的に誤った申告となってしまうおそれがありますので、十分ご注意ください。
参考:国税庁ホームページ
鈴木