中小企業経営強化税制とは?わかりやすく解説

2025/09/03

日記

国は中小企業にもっと設備投資をしてもらうために、さまざまな税制優遇を用意しています。
その代表的な制度のひとつが 「中小企業経営強化税制」 です。

この記事では、制度の概要から手続きの流れ、実際の節税事例までをわかりやすくご紹介します。

Q1. 中小企業経営強化税制とは?

A.青色申告をしている中小企業などが、国の認定を受けた「経営力向上計画」に基づいて設備投資をすると、次のいずれかの税優遇を選べます。

  • 即時償却:購入した年に全額を経費にできる
  • 税額控除:購入金額の10%(資本金3,000万円超は7%)を税金から差し引ける

※ただし税額控除は、当期の法人税・所得税額の20%が上限。超えた分は翌年に繰り越し可能です。

Q2. 誰が対象ですか?

A.以下の中小企業者等です。

  • 資本金1億円以下の会社
  • 従業員数が1,000人以下の法人や個人事業主
  • 協同組合など

※大企業が大きく出資している会社は対象外です。

Q3. いつまで利用できますか?

A.制度の対象期間は、平成29年4月1日 ~ 令和9年3月31日 までです。

Q4. どんな設備が対象になりますか?

A.以下の設備です。

  • 機械装置(160万円以上)
  • 測定・検査用の工具(30万円以上)
  • 器具備品(30万円以上)
  • 建物付属設備(60万円以上)
  • 特定のソフトウェア(70万円以上)

※中古品や貸付目的の設備は対象外です。

 

Q5. 手続きはどう進めますか?

A.以下の手順です。

  • A類型(生産性向上設備):工業会の証明書が必要
  • B類型(収益力強化設備)・D類型(経営資源集約化設備):経済産業局の確認書が必要

経営力向上計画申請までに証明書・確認書を取得 し、事業年度末までに経営力向上計画の認定を受けることが条件です。

※例外あり(補足➁参照)

Q6. どんな節税効果がありますか?

A.4パターンの事例で説明します。

事例1:税額控除を使った場合

  • 設備投資額:1,000万円
  • 税額控除率:10% → 控除額100万円
  • 法人税額:600万円

👉 法人税は 500万円に軽減

事例2:控除しきれず翌期に繰越

  • 設備投資額:1,000万円
  • 税額控除額:100万円
  • 法人税額:300万円(上限60万円しか控除できない)

👉 残り40万円は翌期に繰越し、翌期で活用可能

事例3:即時償却を使った場合

  • 設備投資額:1,000万円
  • 利益:1,200万円 → 即時償却で利益200万円に圧縮

👉 900万円分の利益が減り、大きな節税効果

事例4:即時償却の繰越

  • 設備投資額:1,000万円
  • 利益:500万円 → 即時償却でマイナス500万円(欠損)
  • 翌期の利益:800万円 → 繰越500万円を差し引き課税対象は300万円

👉 翌期の税金も抑えられる

注意点

  • 証明書の取得・計画認定に時間がかかるため、早めの準備が必要です
  • 特にB・D類型は経済産業局の手続きが必要で、書類作成に手間がかかります

まとめ

中小企業経営強化税制は、設備投資と節税を同時に実現できる強力な制度です。
新しい設備を導入する際には、この制度の活用をぜひご検討ください。

補足① 制度の選択肢(表形式)

区分 内容 メリット 注意点
即時償却 設備投資額をその年に全額経費にできる 利益を一気に圧縮でき、大幅な節税効果 利益が少ないと使い切れず欠損になるが、翌期に繰越可能
税額控除 設備投資額の10%(資本金3,000万円超は7%)を税額から控除 直接税金が減るため分かりやすい効果 控除上限は法人税の20%まで。残りは翌期に繰越

補足② 手続きフローチャート(文章での図解)

原則

設備導入を検討

対象設備か確認

(A類型→工業会、B・D類型→経済産業局)

証明書・確認書を取得

経営力向上計画を申請 → 認定(事業年度末まで。申請から認定まで標準処理期間30日)

設備を取得・使用開始

決算・税務申告で即時償却 or 税額控除を選択

 

例外

設備導入を検討

対象設備か確認

(A類型→工業会、B・D類型→経済産業局)

設備取得

証明書・確認書を取得

経営力向上計画を申請(設備取得後60日以内→ 認定(事業年度末まで。申請から認定まで標準処理期間30日)

決算・税務申告で即時償却 or 税額控除を選択

 

補足③ 事例まとめ(表形式)

事例 設備投資額 法人税額 適用制度 効果
税額控除① 1,000万円 600万円 税額控除(100万円) 法人税500万円に軽減
税額控除②(繰越) 1,000万円 300万円 税額控除(100万円) 60万円控除、40万円翌期繰越
即時償却① 1,000万円 利益1,200万円 即時償却 利益200万円に圧縮、節税大
即時償却②(繰越) 1,000万円 利益500万円 即時償却 欠損500万円を翌期繰越、翌期節税

 

補足④ 注意点(チェックリスト形式)

  • 設備購入の60日前までに証明書・確認書を取得したか?
  • 事業年度末までに経営力向上計画の認定を受けたか?
  • 対象設備が要件(新規取得・金額要件・国内利用など)を満たしているか?
  • 即時償却か税額控除、どちらを選ぶか比較したか?

 

石田