iDeCo税制改正 5年ルールが10年ルールに?

2025/11/28

日記

老後の資産形成の手段として注目されている「iDeCo(個人型確定拠出年金)」。
ニュースやSNSなどでもよく耳にする制度ですが、「実際どんな仕組みなの?」という方も多いのではないでしょうか。

今回は、iDeCoの基本的な仕組みと、節税のポイントをわかりやすくご紹介します。

 

1.掛金拠出時の節税効果(所得税・住民税)

iDeCoの大きな魅力の一つが、掛金が全額所得控除になることです。
つまり、その年に支払った掛金の金額分、課税所得を減らすことができます。

例えば、月額2万円(年間24万円)を拠出している場合、所得税率が20%の方であれば
24万円 × 20%=4万8,000円の節税効果があります。
※税率は所得金額によって異なります。

このように、拠出を続けることで毎年の税負担を軽減できるのが、iDeCoの大きなメリットです。

 

2.運用益が非課税

iDeCoでは、拠出した掛金を元手に投資信託などの金融商品を購入し、長期的に運用していきます。
通常、投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの場合は運用益が非課税です。

長期間の運用ではこの「非課税効果」が大きく、複利の力をより活かせる制度となっています。

 

3.受け取り時の税制優遇

iDeCoで積み立てた資産は、原則60歳以降に受け取ることができます。
受け取り方法には次の2種類があります。

  • 一時金として一括で受け取る
  • 年金として分割で受け取る
    (※一部を一時金、残りを年金として受け取ることも可能です)

受け取り方によって、課税される所得の種類が異なります。

 

① 一時金として受け取る場合

退職所得」として扱われます。
退職所得には次のような二重の優遇があります。

  1. 退職所得控除を差し引ける
  2. 控除後の金額をさらに1/2に軽減できる

計算式は以下のとおりです。

(退職金 − 退職所得控除)× 1/2

退職所得控除額は勤続年数に応じて決まります。

  • 20年以下:40万円 × 勤続年数
  • 20年超:800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

例:勤続30年の場合
→ 40万円×20年=800万円 + 70万円×10年=700万円
合計1,500万円が退職所得控除額となります。

さらに、退職所得は分離課税のため、給与など他の所得と合算して税金が上がることはありません。

 

② 年金として受け取る場合

雑所得」として扱われ、公的年金等控除を受けることができます。
受け取り期間は5年から20年の間で自由に選択が可能です。

このように、iDeCoは「掛金」「運用」「受け取り」のすべての段階で税制優遇が受けられる制度です。
特に長期で運用を続けるほど、非課税・控除の効果が大きくなるため、早めの活用がポイントとなります。

 

 

iDeCo税制改正 ―「5年ルール」が「10年ルール」に変更!

ここまでご紹介した内容が、iDeCo(個人型確定拠出年金)の基本的な仕組みです。
ここからは、令和7年度の税制改正による変更点について解説します。

 

1.月額掛金の上限が引き上げに(プラス改正)

今回の改正で、掛金の上限額が引き上げられました。
引き上げ幅は職業区分(自営業者・会社員・公務員など)によって異なりますが、
より多くの資金を老後のために積み立てられるようになる点は、前向きな改正といえます。

老後資金の準備を強化したい方にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

 

2.「5年ルール」から「10年ルール」へ(注意が必要な改正)

一方で、「5年ルールが10年ルールに延長された」点は、
多くの専門家から「改悪」とも言われている部分です。

この変更は、iDeCoを一時金(退職所得)として受け取る場合に関係します。
具体的には、退職所得控除の計算に影響が出てくるものです。

 

▽ 退職所得控除とは?

退職金やiDeCoを一時金として受け取る際、
「勤続年数」または「加入年数」に応じて一定の金額を控除できる制度です。

ただし、iDeCoの一時金と会社からの退職金を近い時期に受け取る場合、
その期間が重複すると、控除額が**減額される(調整される)**仕組みになっています。
(実際の計算はもう少し複雑です。)

 

▽ 従来の「5年ルール」

これまでは、iDeCoの一時金を受け取ってから5年以上経っていれば、
会社の退職金と重複期間の控除調整を受けずに済みました。

 

▽ 改正後の「10年ルール」

令和7年度改正により、
iDeCoの一時金受取から10年以上経たないと
退職所得控除を最大限に活用できなくなりました。

【具体例】

  • 勤務期間:30歳~65歳(退職金受取:65歳)
  • iDeCo加入期間:30歳~60歳(一時金受取:60歳)

この場合、30歳~60歳の30年間が重複期間となります。
そのため、退職金受取時における退職所得控除は実質5年分しか適用されない可能性があります。
(※実際には、iDeCo受取額に応じて重複期間を按分して調整します。)

 

3.改悪といわれても、iDeCoの節税効果は依然として大きい

今回の改正は、一見すると不利に見える部分もありますが、
それでもiDeCoは依然として税制面で非常に優れた制度です。

退職所得は、控除後の金額に1/2を乗じて課税される仕組みのため、
受け取り時の税負担は他の所得に比べて軽くなります。

老後資金の準備を考えるうえで、iDeCoの活用は今後も外せない選択肢です。

 

4.その他の資産形成制度との比較

老後資金を準備する手段はiDeCoだけではありません。

  • 経営者の方:小規模企業共済
  • 会社員の方:企業型DC(確定拠出年金)
  • 投資初心者にも人気:NISA(少額投資非課税制度)

それぞれ特徴が異なるため、
「自分のライフプランや退職時期に合った制度を選ぶこと」が大切です。

 

5.まとめ:お金を「預ける」から「運用する」時代へ

円安や物価上昇が続く時代、
銀行に預けるだけではお金の価値が目減りすることもあります。

今後は、「どの制度を、どのタイミングで使うか」という情報収集と判断が重要です。
ご自身に合った制度を選ぶ際は、ぜひ弊所スタッフまでお気軽にご相談ください。

 

荒井